9784091364166

『うせもの宿』は穂積さんの描くファンタジー漫画。古い宿のような場所が舞台の、和風な雰囲気が魅力的な漫画。単行本は全3巻で完結しています。

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うせもの宿のネタバレ

「うせもの宿」は“自分の失くしたものが見つかる”という不思議な宿。
大切なものを失くした人しか入れませんが、案内人の“マツウラ”という男に連れられて、様々な人が訪れます。

ここにいるのは老人の番頭さんや従業員たち、それから子供にしか見えない“女将さん”。
女将さんは客人に冷たい態度を取りながらも、なんだかんだで客人たちの失せ物探しを手伝ってあげています。

結婚指輪を探す夫、母からもらったぬいぐるみを探す男の子、息子を探す母親……などの客人のエピソードが最初は描かれるので、「こんなふうに、客人の失せ物探しを女将さんが手伝っていくというパターンの1話完結型の物語がずっと続くのかな?」と思いながら読んでいたのですが……

読んだ後は、そうじゃないのがこのお話のミソだったんだな、という感じ。この作品は、少しずつひとつの物語に収斂していきます。

お話の転機となるのは、うせもの宿の従業員のエピソード。実は客人だけでなく、従業員たちももともとは何かを探しに来た人々だったのです。

自分の失せ物がいつ見つかるかは人によってまちまち。
客人として訪れ、失せ物が見つからないまま従業員として働き始める人たちもたくさんいるのです。

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うせもの宿の最終回の感想

こうなると気になるのは主人公の女将さんの失せ物です。

ある日若い従業員が女将さんの失せ物は何なのだろうと思い、周りの他の従業員に尋ねます。
そこで明らかになるのが、女将さんには失せ物宿に来るまでの記憶がないという事実……。

女将さんは自分の失せ物が何なのかもわからないまま働いていたのです。
物語は次第に、女将さんの過去を探っていきます。

もうひとつの見どころが、案内人マツウラの存在です。マツウラは宿の門まで客人を案内してきますが、自身は決して宿の中に足を踏み入れません。門の外から、いつも笑顔で女将さんを見守っています。

物語の最初の方で登場する男性がこのマツウラのことを「胡散臭い」などと称するのですが、確かにマツウラは謎が多くて怪しい人物です。

しかし、物語が進んでいくうちに、「マツウラは女将さんのことを本当に大切に想っているんだな……」ということが伝わってきます。
女将さんの過去の鍵を握るのも、このマツウラなのです。

いつも無愛想な女将さんと、いつも笑顔のマツウラさん……この2人の過去について、詳しいことは読んでからのお楽しみということにしておきましょう。

1巻から続けて読んでいると、マツウラの愛の深さに胸が苦しくなります。とにかく切ない。

記憶を持たない女将さんを離れたところから見守り続け、いつか記憶が戻らないだろうかと待ち続ける案内人……。

マツウラはこの漫画においてほぼ唯一の、宿の客人ではない人間です。そういう意味でも、とても孤独。
いつも笑顔だったマツウラの表情が崩れるシーンは涙必至です。

感動できる漫画、泣ける漫画が読みたいという人にはぜひおすすめしたい一作。

3冊という短さですが、内容はとても濃く、忘れられない一冊になること間違いなし。
ページをめくって、ちょっと無愛想な女将さんに会いに行ってみませんか?

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